エッセー 地方自治体主催の文学賞のこと③

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 僕は今でも審査員は、こんな手抜きの小説を入賞させることには躊躇したと思っています。  ただし、地元のアピールになるということで苦渋の選択をしたのではないかと想像しています。  以前に小説の書き方について教える本を読んだことがあります。父か母が購入した相当古い本で、タイトルとか、著者の名前とかは憶えていません。  あくまで記憶を基に書いていますが、こんな内容の文章を読みました。  <人物や舞台となる地域について取材することは重要だが、特徴となるポイントを探し出すことが重要になる。  多くのことを取材しても、そのうちの大部分は、その人物や地域だけの特徴ではないものばかりである。  やたらと取材ばかりしてそれを風呂敷に広げても、ピンぼけになる恐れがある>  手抜きの「取材」ですが、パンフレットを丸写しにしたお蔭でポイントは押さえていたということかと思います。  地域興しの文学賞はすぐに作家になる道が約束されるわけではありませんが、比較的賞金が高いし多人数入賞することも少なくないので、腕試しにはよいのではと思っています。  授賞式を行う場合もあり、日帰りか一泊旅行も楽しめますし・・・  ただし今は、求められるレベルが随分高くなっているようなので、僕のような手抜きでは無理だと思います。   
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