エッセー 共同出版について⑦日本文学館との日々

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 ところがその日。日本文学館の大針という人が最終選考を伝えることになっている日。  当時の僕は平日休みでしたが、日中に電話がかかってくることはありませんでした。  夜の七時頃、電話があったので少し心をときめかせましたが、偶然にも別のエッセーのコンテストの事務局からでした。  ある大型百貨店募集。二百字のエッセーのコンテストでした。  入選したので五千円の百貨店の商品券を贈るということでした。電話をかけてきたのは、  「応募したことはまちがいないか?冊子に掲載するが、内容が変わらない程度に字句を訂正してもよいか。  商品券の郵送先の住所氏名」 を確認するためでした。  結局、その日、思いがけない電話はあったものの、日本文学館からの連絡はありませんでした。  連絡があったのは、翌日の昼間です。僕は出勤していました。大針さんからの留守番電話は、  「昨日は多忙のため、ご連絡できませんでした。御留守なのでまた改めてご連絡を入れます。  なおコンテストの結果ですが、選外でした」 というものでした。  少し唖然としました。  夜遅く電話をかけてきて、明日の最終選考では一推しすると言っていたのはどうなったのでしょうか?  少しカチンときましたが、落選したものをアレコレ思ってもしかたないのでそれ以上、考えないことにしました。  翌日、仕事から帰ると、日本文学館からの封書が届いていました。  要旨は次の通りです。当時のメモと自分の記憶で書いています。    <あなたの作品は評価も高く、推薦も多かったのですが、惜しくも選外になりました。なおこの結果はあなたの作品のレベルとは全く関係ありません>  あきれた手紙です。評価が高く推薦も多かったのなら、何で入選三十作に選ばなかったのだと思いました。  第一、レベルが高かったら入選してるはずです。  そして手紙の続きに本題がありました。  <今回、優れた作品が多く応募されたことで、私達も非常に驚き、緊急の会議を開きました。  そのうえで、当社で進めている共同出版のシステムを是非とも強力に推進しようと決定しました。  さあ、あなたも私達と共にこのシステムに参加して、新しい明日を迎えましょう>  先程紹介した日本文学館の共同出版についての営業文句でした。  おまけに共同出版の広告まで入っていました。  不思議なことに、最終結果が出たというのに、入選者の氏名は全く紹介されていませんでした。  僕は興味なかつたので手紙は処分し、フリーダイヤルに連絡もしませんでした。  翌日から連日。留守電に大針さんからの電話が録音されていました。  「お留守なのでまたご連絡入れます」 というのです。  みなさん。どう思いますか?  自営業や夜勤の人はもちろんいるでしょう。  でもたいていの男性は、日中出勤しているのが普通でしょう。  何で不在が確実な時に電話してきて、  「最終選考作品に選ばれました」 と連絡してきたみたいに、夜遅く電話してこないのでしょう。  本当は電話したくないんじゃないか?  別にそんなことは言わないけど、    「何が一推しだ。ふざけるな!」 と罵られるのを恐れてるんじゃないかとまで勘ぐりました。  一応、営業をかける人間のリストがあって、必ず電話して報告しなければならないんじゃないかと・・・      
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