歴史エッセー ハリマオと話した夜

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 出演者について簡単に触れておきますと、近藤圭子は当時、人気のあった童謡歌手です。ご年配の方にお聞きすると分かりますが、昭和二十年代から三十年代にかけては、童謡歌手が少女達のアイドルだったんですね。  第一部。ジャワ統治庁の依頼でハリマオ暗殺をたくらむキャプテンKKをカッコよく演じたのは、子供向けドラマで絶大な人気のあった牧冬吉です。   さてこのドラマの主役を演じた勝木敏之は、人気ドラマの主役だったにも関わらず、その後、あっという間に姿を消したことから様々な憶測が流れました。  勝木は1933年の生まれ。青森県出身。  俳優座養成所を経て俳優への道を進み、『快傑ハリマオ』で主役に抜擢されました。  芸名は宣弘社の小林社長の命名です。本名は伏せておきます。もちろん知っていますし、ハッキリ書いている本もあります。  『快傑ハリマオ』以降は、宣弘社の『隠密剣士』に悪役で出演したくらいで、すぐに俳優を辞めています。  あまりいい辞め方ではなかったと聞きました。  その後、一切、マスコミ関係の取材には応じず、何も語らないまま、消息不明となっています。  石橋春海さんが執筆した『昭和特撮ヒーロー』では、雑誌の仕事で勝木とアポイントとろうとした時のことが書かれています。趣旨を紹介してみます。  <東京の五反田で居酒屋を経営していたと聞き、その住所を尋ねるが、すでに店はなくなっている。  そこで自宅のあるビルを尋ねてみるが誰も出ない。  電話をかけてみると女性が出たが、「勝木」の名前を出した途端、一方的に切られた。  実家の電話番号を調べて連絡したところ男性が出たが、「勝木」の名前を出したら切られてしまった。  宣弘社も勝木の消息を探していると聞いている>  古本屋で見つけた女性週刊誌では、「あの人は今!」という特集で、  <人気ドラマの主演俳優だったにも関わらず、マスコミの取材に一切応じていない> と書かれていました。  今から書くのは、勝木敏之と話をしたときのことです。  若く希望に満ちていた頃の思い出です。
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