エッセー 入賞した時のこと②

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エッセー 入賞した時のこと②

 僕が受賞したのは、「第一回 文芸社ビジュアル大賞」というコンテストです。  小説部門、児童文学、詩などの部門に分かれており、「第一回 文芸社ビジュアル大賞優秀賞 児童文学部門」を受賞しました。  第一回ということで、相当な応募があったということでした。公募の専門雑誌「公募ガイド」で大きく宣伝していましたし、賞金も高額でした。  月間賞五万円、優秀賞で五十万円でした。授賞作品を無料で出版してくれることになっていました。  ですからこの時は、総額五十五万円受け取りました。  今では大手出版社のコンテストでも、こんな高額な賞金は少ないと思います。    このコンテストが何回まで続いたのかは覚えていません。  授賞式は三月の土曜日で、新幹線に乗って東京の文芸社まで行きました。交通費はその場で清算してもらいました。  時間があったので、受賞作品を見て回っていました。自分の原稿の隣に「児童文学特別賞」の原稿がありました。  特別賞は賞金はなく、無料出版のみでした。  記憶では、四百字詰め原稿用紙に換算して、四百枚以上の大作でした。作者は女性の方でした。授賞式の際にインタビューを受けていましたが、主婦の方だったように記憶しています。  このコンテストのために執筆した力作で、率直な気持ち、  「どうしてこの作品が入賞しなかったのか」 と不思議に思いました。  優秀賞を獲った僕の作品というのは、四百字詰原稿用紙四十枚以下でした。  しかも他のコンテストで落選したものを、右から左に回しただけでした。  ある児童書専門の出版社が、児童向けミステリーのオムニバスを出版するということで応募したのです。最初からライト系のラブコメミステリーを念頭に執筆しました。  この時、応募のルールをよく読まずに、応募用紙のサイズを間違えていたことに、後になって気がつきました。  自分としては自信作だったので、  「用紙のサイズくらいは考慮してくれるのでは・・・」 と思ってましたが落選でした。用紙サイズが違うので最初から失格だったのか、そのへんのところは分かりません。  ちょうどその頃、文芸社のコンテストがあったので、改めて落選した作品をプリントして応募しました。  要するに  「落選した作品は、落選する理由がある。右から左に応募するのはいかがなものか」 という「公募の心得」に反した行為だったわけです。
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