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「…あの時、本気でぶん殴っておけば良かった」
実に胸糞が悪い。
何が現人神だ。やってることは畜生の所業じゃないか。
記録を読み進めていく度に、指先に力が入る。
ディープへの怒りか、被験者への無力感か。もしくは、その両方か。
キーボードを叩き潰しそうになった時、僕の肩から細くしなやかな腕が伸びた。
「はい、そこまで」
…マリアだった。
彼女はそのまま僕を抱き締めると、耳たぶを甘噛みした。
甘く、囁くような吐息が耳元に伝わってくる。
不思議なことに、僕はそれで身体から力が抜けてしまった。
「あんなオカマ相手に熱くなるなんて勿体無いわよ」
「…すいません。しかし…」
「焦らなくてもいつか必ず決着つけてやるわ。あいつのチ◯コもぎ取ってセルフファ◯クさせてやるわ」
その時はゴウも手伝うのよ…そう結んで、マリアは笑った。
あまり想像したくない絵面だが、僕もつられて笑ってしまった。
些か不謹慎ではあるが、マリアなりに慰めてくれているらしい。
こういう所は上司してるな、とつくづく思う。
「…さて」
マリアは僕を椅子ごと振り向かせると、向かい合った姿勢のまま、僕の足に腰を降ろして身体を密着させた。
近い。とにかく近い。
それに密着されているせいか、マリアの感触がダイレクトに伝わってくる。
体温、吐息、そして、心臓の鼓動…。
やってることはいつものセクハラと大差ないのに、今は何故か心地好かった。
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