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「…ダメよ。大きな声出しちゃ」
僕が頷くと、コーガンさんは辺りを一瞥してから手を離した。
「…何をやっているんです?」
「潜入捜査ってやつよ。奴らに気付かれるとマズイからね」
コーガンさんが小声で囁く。
その視線の先には、コールガール達に捕まっている男達の姿があった。
このクソ暑いのに真っ黒なスーツを身に纏い、ご丁寧にサングラスまで掛けている。
「…あいつらですか。報告にあったのは」
「そう。街中をうろうろしてるわ。おかげで解りやすいけど」
なりふり構わず探しているのだろう。
奴らにとって、実験体の二人は仲間の仇であり、なんとしても手に入れたお宝だ。
僕らは腕を組み、黒スーツ達の横をすり抜けた。
一瞬、奴らは目を丸くしたが、やがて得心したように目を逸らした。
「ね、これなら怪しまれないでしょ?ゴウちゃんも一緒に女装しない?」
「いえ、僕はお客役でお願いします」
「失礼ね。恋人役とお言いっ」
戦慄するような台詞を吐き、コーガンさんは足を進めていく。
歩調がやけに確信的だが、何処に向かっているのだろう?
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