chapter4 騒動の種はどこに

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 尤も、殆ど壊れて生き残っているのは『Ma』『n』『Co』の文字だけだが。 「陰気なトコねぇ…ホントにいるのかしら」  僕は掌を地面に置き、目を瞑った。  レストランの方から、僅かに振動が伝わってくる。  小さな足音だ。余裕がないのか、忙しなく動き回っている。 「足音が一つ…中に誰かいるようですね」 「ゴウちゃんも大概人間じゃないわね…」  僕は立派に人間だ。うちの上司と一緒にしないでほしい。  懐から銃を取り出し、構える。  コーガンさんも太股に巻かれたホルスターから、リボルバーを取り出した。  スカートに隠すには大きすぎると、いつも思う。 「…踏み込みますか?」 「ゆっくりよ。大きな音を発てちゃダメ」  レストランのドアを開き、気配を殺して侵入する。  昼間なのに真っ暗だ。足下すらよく見えない。  銃を構え、先を進む。  元厨房へと足を踏み入れた、その時だった。  一瞬、頬に風を感じたかと思うと、僕の銃が真っ二つに切り裂かれた。 「ゴウちゃん!?」  銃を手放すと同時に、暗闇から伸びた腕が僕に襲い掛かる。  早い…が、対応出来ない早さじゃない。  僕は相手の手首を掴み、逆に腕を捻り上げた。 「連邦警察だ!神妙にしろ!」  相手の動きが止まる。  だが、何故か腕は僕の拘束をすり抜けて、鋭い一撃が首元を掠めた。 「!?」  背後で銃声が響く。  コーガンさんのリボルバーの音だ。  小さな悲鳴が聞こえ、闇の中で何かが倒れる音が聞こえた。  …命中した。が、息遣いが聞こえてくる。死んではいないようだ。  僕とコーガンさんは襲撃者へ近付いた。  既に目は暗闇に慣れ、全てがはっきりと見えている。  床に落ちる赤い血と、敵意と怯えの籠る青い瞳。  そこにいたのは、腕から血を流す少女の姿だった。
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