chapter1 来たのはDだ/女神と天使の密会

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「ふーん…ゴウもあたしのことが解ってきたかぁ」  グラスを起き、嬉しそうにマリアは僕の指先に触れた。  そのまま指を這わせて、顎を掴んで顔を近付ける。吐息を感じる程の至近距離だ。  思わず、僕は息を飲んだ。 「あたしとしては、もっと知って欲しいんだけどなぁ。あたしの深いトコまで…」  お互いの唇が触れる。  いつもなら舌を入れ込んで、口内を掻き回す所だが、マリアは突然唇を離した。  呆気に取られる僕に背を向け、現れた闖入者へ視線を写す。 「…ノゾキとは趣味が悪いわよ」  マリアの言葉を受け、その人物は僕達へ近付いた。  腰まで届く銀色の髪に、薄く開かれた瞼から覗く小さな瞳。  よく見ると、左右の瞳の色が違う。  右はエメラルドを思わせるような鮮やかな緑、そして、左は鮮血にも似たルビーの赤だった。  それでいて、細く儚さを感じさせる面持ちは、マリアとは別のベクトルに美しかった。  まるで、宗教画に出てくる天使だ。  だが、解らないことが一つだけあった。  その人物が身に纏っているのは、シースルーという言葉すら生ぬるい透けた布地一枚だけである。  上も下も、全て丸見えだ。  形の良い胸部の膨らみ、そしてしなやかに括れたボディライン。  だが、その下半身の中心には上半身の特徴からは絶対にあり得ない物がぶら下がっていた。  僕にとってだけでなく、世の中の男性にはとても馴染みの深い物だ。 「あまりの懐かしさについ…ね。君が元気そうでなによりだよ」  流れるようなしなやかな動きで、その人物は僕らの席に座った。  そして、僕に気付くと天使を思わせる慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。 「はじめまして。私はディープ。マリアの友人だ」  ディープ…そう名乗った彼(彼女?)に、マリアはわざと聞こえるように、盛大な舌打ちで応えた。 「生きてたのねオカマ野郎。てっきりくたばったと思ったわ」 「以前にも言ったけど、オカマじゃなくて両性具有(アンドロギュノス)。間違えないでくれ」 「あら、そうだった?ごめんね、オカマ」  口調こそ穏やかだが、二人の態度には明らかな嫌悪が滲んでいる。  出会い頭に喧嘩腰になるなら、会わなきゃ良いと思うのだが、今はそうも言っていられない。  僕は、ここに至る経緯を思い出していた…。  
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