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「ボス、ゴウさん!」
ブルーシートの近くにいた捜査官が、僕らに呼び掛ける。
ペニスン・マクダネル捜査官。通称、マッスルさん。
黒い肌と屈強な肉体を持ち、穏やかで優しい性格をした僕の同僚だ。
「あら、二人揃ってなんてお熱いわね」
そして、もう一人。
厚化粧+バリトンボイスで近付いてきたのは、同じく捜査官であるマラオ・コーガンさんだ。
コーガンさんは長年スペルマシティに勤務するベテラン捜査官で、三人の娘を男手一つで育てた立派な人物である。
唯一つ難点をあげるとするならば、娘さん達が独り立ちした際に色々と吹っ切れてしまい、新たな世界への扉を開いてしまったことだろうか。
彼のもう一つの名前はアイリーン・コーガン。
本名とも渾名とも違う、魂の名前である。
「誤解ですよコーガンさん。ボスが着いてきたんです」
本来なら、現場には僕一人が応援として向かう予定だった。
それを、「暇だから」とマリアが着いてきたのだ。
「そうよ。この鈍ちんにそんな甲斐性あるわけないじゃない」
「それもそうね。オンナゴコロが解らないものねぇ、ゴウちゃんは」
酷い言われようだ。
しかし、下手に反論しようものなら二倍のセクハラで返されそうな気がした為、僕は黙ってブルーシートの傍に腰を落とした。
「どんな状況です?」
「酷いもんですよ。全身バラバラの死体が8体。どれもこれも細かく千切られ過ぎて判別がつきません」
夏場では腐敗も早かっただろう。
しかし、バラバラ死体が8体もとは尋常な数ではない。
異常者による猟奇殺人だろうか?
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