chapter5 特務機関の追撃

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chapter5 特務機関の追撃

 少女は腕を押さえ、呻いていた。  青い瞳に、乱れたままの黒髪(ブルネット)。  幼さの残る顔立ちをしているが、右頬に深く刻まれた傷が、境遇の悲惨さを物語っていた。  …この顔は間違いない。 『アンラスト細胞』被験者C-9号。  ディープの作り出した実験体にして、僕らが追っている容疑者だ。  ある程度の情報は得ていたが、実際に本人を前にすると、自分の目を疑いたくなる。  まだほんの子どもじゃないか。  僕の人生の半分も生きてはいないのに、何故こんな目に合わなければいけないんだ。  少女は変わらず敵意の籠った目で、僕らを睨め上げる。  ふと腕を見ると、既に傷が塞がりかけていた。  もう再生が始まっているのか…。動けるようになったら、また襲い掛かってくるかもしれない。  拘束するか…いや、しかし…。  考えあぐねていると、コーガンさんがC-9号へ近付いた。  そして、スカートの生地を破ると、彼女の腕へと巻き付けた。
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