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chapter2 オカマとディナーと取引
ことの発端は数時間前に遡る。
真夏の太陽が照り付けるメインストリートを抜け、僕とマリアは『クリトリスクエア』のセンター街へやって来た。
まだ昼間だというのに、コールガールやソープランドの勧誘で騒がしい。
実に『スペルマシティ』らしい光景だ。
真っ昼間から客引きをする風俗嬢。
ソープランド前を彷徨く男性達に、ぼったくろうと待ち構えているボーイ達。
『中央国家の恥部』とは、まったくもって言い得たものである。
しかし、僕も赴任してから知ったことだが、この街を大きく分ける二つの区域では、犯罪の性質が大きく違う。
例えば、東区である『ペニスクエア』では男性の犯罪が多く、原材料僕らが訪れている『クリトリスクエア』では女性の犯罪が多い。
街の守護神(破壊神?)であるマリアによれば、この街に複数ある犯罪組織の仕業とのことだが、そんな物騒極まりない組織やら人物がボコボコ沸いて出て来ている時点で、この街の土壌そのものの問題である気がしないでもない。
しかし、事件が起これば警察が対応するのが世の常。
犯罪組織があろうがなかろうが、日々起こる犯罪には立ち向かわねばならない。
喧騒を抜け、僕とマリアは廃材置き場へ向かった。
自動車やら家電やらが無造作に放棄された、スクラップの溜まり場だ。
既に先行していた警官達が、『keepout』と書かれたテープと共に僕らを出迎えた。
「お疲れ様です」
敬礼し、挨拶をする。
心なしか、警官達の顔がげんなりして見えた。
その表情だけで、どんな現場なのか想像出来る。しかし、行かない訳にもいかず、僕は心のスイッチをOFFにして先に進んだ。
テープの先では想像以上の光景が広がっていた。
幾つも並べられたブルーシートに、鼻を突くような腐臭。片付けられているとはいえ、さっきまで命だった物が辺りに散らばっていたのは明白だった。
一気に胸からいやなものが込み上げてきそうになったが、僕は無理矢理喉の奥へ押し込んだ。
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