木漏れ日の湖

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(おいしい.......) 体の隅々まで染み渡る。 暖かな光がが体を包み込んでいく。 そんな感覚だった。 「あっ、お母さん!」 僕は母を置き去りにして来たことを思い出し、歩いてきた道を辿る。扉を出たところで振り返ると、扉や湖など、元からなかったかのように消えていた。 「リュカ、何か言うことは?」 「ごめんなさい.......」 母のもとに戻り、現在叱責中である。 約束を破り、ひとりで勝手に行動したのだから自業自得であるが、普段穏やかな母に叱られるのは恐怖に似たものを感じる。 「もうこういうことはしないでね?」 「ハイ.......」 「分かったらこっちにいらっしゃい」 母が手を広げるので、近くまで行くと優しく抱きしめられる。 「心配したのよ.......。本当に、無事でよかった」 「母さん.......」 僕はこの時の母の安心した表情をみて、心配させるようなことはしないと、心に決めた。
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