帰省

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 この日のメニューはカレー、見事な定番食。  それにサラダ、牛乳と混ぜればババロア風味になる、市販の即席デザート。  ドレッシングは3種類、中華とフレンチと和風。これは手作りだった。  ここでもマキは仕切りまくり(自分はろくに何もせず)、綾香はこき使われていた。 「あ、なんかニンジン足りない。綾香、裏から持ってきて」  何も言わず、ニンジンを取りに行く綾香。私はそれを横目で見る。 「あぁ、なんか先輩たち、味がどうとか文句言うかな」  まぁ、それはあるかもな、と思ったら、マキの悲鳴がした。  見ると、牛乳が下に落ちて、ほぼ全部こぼれている。 「あぁ、どうしよう」 「デザートなし?」 「えぇ、先輩たちに何か言われるよ」 「残りの分で分ける?」 「配分少なくなるね」  すると綾香が、ニンジンを持って調理場に入ってきた。するとマキが、 「綾香、ちょっと牛乳買ってきてくれない? 駄目になっちゃったの」  雰囲気が凍った。 「お金は後で渡すから」  自分が駄目にしたくせに、何言ってるの!? 「マキ、スーパーちょっと遠いよ、コンビニもないし」  これはあんまりなので、私は口を返した。 「だって牛乳ないとデザート作れないよ」  言い返そうとしたら綾香が、 「いいよ、行ってくる。牛乳でいいのね」  綾香は出て行った。 「よし、みんなカレー作ろう」  そしてマキはじゃがいもを切り出した。気のせいか「みんな」に力が籠っている感じがする。  私は綾香を追いかけた。 「綾香、本当にいいの?」 「いいよ」  かなりそっけない。 「……施設の自転車があるはずだから。事務局行って、鍵借りてきな」 「うん」 「あ、これ。ジュースでも買って」  と、130円を渡した。 「そう、ありがと」  そうして、綾香は歩いて行った。    それが、私が綾香を見た最後だった。
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