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陽菜は電話の向こうで、軽く息を漏らした。
『うちらに、どうしろって言うんだろうね』
天井を見上げながら聞いていた。今だ綾香は行方不明だ。
『確かに、一人で行かせたのは、悪かったかもだけど』
「綾香は、あの場にいるのが嫌だったのかもしれないね」
あそこでマキに使われるより、牛乳を買いに行った方がよかったのかもしれない。
スーパーの店員が綾香を見たのと、レシートの控えからも牛乳を1本買ったのは証明されている。その後の足取りは分からない。
何か事件に巻き込まれたのか、自ら姿を消したのか。
「お母さんにしてみれば、一人娘がいなくなった訳だから、どこかにぶつけたいんでしょ」
確か、母子家庭だったはず。
父親がなぜいないのかは分からないが、それで娘がいなくなればやりきれないだろう。
『てか、マキの所に行けばいいのに。行ったのかな』
それは私も思った。てか行ってほしい。
「成人式、マキも来るのかな」
マキは、どう思っているのだろう? 聞く気はないが。
それから取り止めのない会話をして、明後日ね、と電話を切った。
綾香のお母さんを思い浮かべながら、メグの『成人式、盛り上がろうぜ! 変な意味でなくてね』のラインメッセージとスタンプを、しばらく眺めていた。
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