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懇親会も終盤、手洗いに行った。
手を洗って、鏡をみながら考える。
マキは反省してるのか、考えたくないだけなのか。自分の非を、認めたくないだけなのか。
自分のした事が、分かる日が来るのだろうか?
綾香の失踪だけでないにしろ、自分がしてきた行為をどう思ってるのだろう。
……言われても、分からないだろうな。
そんな事を考えながらトイレから出ると、目の前に原田が立っていた。
するとまた頭痛とめまいがした。首が苦しい。周りが、静かになった気がする。
逆光で無表情の原田に、少々不気味なものを感じた。
「久しぶりだな、莉緒」
声がして、我に返る。
「はい」
なんか、待ち伏せしてたような雰囲気だ。気のせい?
「……綾香と最後に会話したの、お前か?」
さっきの話、聞いてた?
「そうですけど」
「そうか、何か変わった様子は? 普段から、何かおかしかった様な事は」
先生なりに、気にしてるのかな。
「いえ、特には」
誰も綾香と交流を持たなかった。様子がおかしいにしても、誰も気が付かなかっただろう。
「そうか。どうしたんだろうな。牛乳とオレンジジュース買って、どこに消えたんだろ」
動きが止まった。
オレンジジュース?
「先生」
「ん?」
「オレンジジュースって?」
原田の顔が変わった。
「牛乳を買いに行ったんだろ? ジュースも一緒に買ったんじゃないのか?」
「……スーパーのレジの控えで、牛乳しか買ってない事が証明されてる。オレンジジュースって?」
どこから、オレンジジュースが……。
その時、頭の中に、見た事のない光景が入ってきた。本当に一瞬で、注射器で打ち込んだ様に。
呼吸が荒くなった。
今の現象が信じられないのと、目の前にいる、この人を見て、自然と足が後ずさる。
「莉緒?」
声が震える。
「……先生」
原田は黙っている。
「先生だったんだ……」
呼吸をするのさえ、苦しい気がする。
「先生が……」
気が付くと、叫んでいた。
「先生が、殺した。綾香を殺した! 殺して、埋めたんだ!!」
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