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頭の中に、イメージが入ってくる。
綾香が牛乳を買ったレジ袋を持って、外にある自販機でジュースを買っている。
あれは私が渡したお金だろう、レシートに記載されるのが嫌で、自販機から買ったのかもしれない。
それを籠に入れて、ペダルを漕ぎだした。
信号を渡り、山道まで来ると、車に乗った原田が声をかける。
「綾香、買い物か? 自転車ごと送っていくよ」
原田の車は大きいジープ。自転車の一つや二つ、楽に入る。綾香は何の疑いもせず、自転車もトランクに乗せ、車に乗る。
「暑いな」
「うん。あ、ジュース飲んでいいですか? おごってもらったんで、人前で飲めないんです」
「あぁ、いいよ」
オレンジジュースを飲みだす綾香。原田の様子の変化に気づかない。
そして合宿所である「いずみの里自然の家」が見えた。でもスピードを緩めない。
ここで綾香は少々、不審に気づく。そして合宿所を通り過ぎた。
「先生?」
原田は返事をしない。
綾香は身の危険を感じたのか、ジュースを持っている手が震え出した。
どこまでか、車は走る。綾香は本格的に怯え出した。
「先生、どこ行くの?」
何も言わず、スピードを上げる原田。
人気も、車もあまり走らない様な場所で、原田は車を停めた。
「……お前、今年の5月、俺がある男の人と校舎裏で会ってるの見たよな」
綾香が目を泳がす。急に聞かれて、戸惑ったのだろう。
「……そういえば、見ました」
「そこで何してたか、覚えてるか」
綾香は考える。
「封筒のようなの、先生がもらってた、様な? それが何か」
原田は下を向いた。
「そうか、覚えてたか。誰かに話したか?」
「いえ、今思い出した」
不思議そうな顔をする綾香。
すると原田はポケットから紐を取り出した。
ジュースを投げつけ、車から出ようとした綾香の首に、紐を巻き付け、絞めだした。
苦しそうに首の紐をひっかく綾香。原田は瞬きさえせず、絞め続ける。
やがて綾香はぐったりして、動かなくなった。
原田はまた車を走り出す。
どこかの山の中、懐中電灯を持ち、袋に入れた綾香とスコップを引きずって歩く。
辺りは真っ暗だ、きっと夜中まで死体を隠してたんだろう。
綾香は小柄だが、死体となれば重いだろう。それでも引きずって歩いて行く。火事場のバカ力って、こういうのを言うのだろう。
そしてひたすら穴を掘り、そこに綾香を投げ入れ、土をかぶせた。
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