帰省

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 実家に帰ってきたからだろうか?  久々に、あの夢を見た。 「おはよう、莉緒」  お母さんが、洗濯籠を持ちながら、外に向かう。  昔ながらの光景。  実家にいると、洗濯も何もしなくていい。  洗面台に向かい、妹の化粧水やらシャンプーに占領されている鏡の前に、時間が経っている事に気が付く。  高校生にくせに、嫌にいいの使ってるな。  洗顔を終え、その化粧水を勝手に使った。へぇ、結構いいじゃん。  リビングに行って、テレビを点ける。 「お姉ちゃんおはよう」 「おはよう、愛莉。昨日何時で帰ったの」 「別にいいじゃん、夏休みだし」  眠そうに新聞のテレビ欄を見る。 「成人式、いつだっけ」 「明後日だよ」  私の所は、夏に成人式をする。振袖に金を掛けない為、という自治体の意向らしい。  そして中学の友達を思い浮かべた。  陽菜、メグ、遥……。  高校を卒業した時にしたクラス会以来、会ってないな。  私は東京の大学に進学して、陽菜は千葉の大学に進学。メグと遥は地元の企業に就職した。  陽菜は私と同じバド部で、ペアを組んでいた。中二の秋の、県大会二回戦までが、私たちの最高成績。  そこまで行けたのも、奇跡みたいなもんだった。  そして、思い出したくない事を、思い出す。 ──綾香、ちょっと牛乳買ってきてくれない? 駄目になっちゃったの。  体に、重力が掛かった気がした。  すると軽いめまいと、頭痛がした。辺りが暗くなった。  え、何? 「ねぇお姉ちゃん、大学って楽しい?」  愛莉の声がして、我に返った。 「え、まぁ……」  なんだ、今の? 片頭痛? 「ふぅん、私はいいや。受験面倒くさい」 「高校受験も、あまりしないで遊んでたもんね」 「だって別に志望校余裕だったし。その上にはどうしても行けないし」  行けば行けたのではないかと、私は思う。  どうもこの子は、努力する、という事をしたくないみたい。そういう性格なのだろう。  まぁそこそこ、適当に何でも熟せるから、問題はないかも。 「お姉ちゃん、今度トムフォードのアイパレッド買ってきてよ」 「あんな高いの。キャンドゥでいいじゃん高校生が」 「トムフォード、いいのがあったんだよ、この辺で売ってないし」 「スマホで注文したら?」 「お金ないもん」  そっちか! 「あ、こんな時間だ。そろそろ髪巻いて、メイクしないと」  そう言って、愛莉は部屋に向かった。  まだ9時前、ヘアアイロンとメイクに時間が掛かるのだろう。高校生活を謳歌しているようだ。
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