帰省

6/12
前へ
/19ページ
次へ
 運転をしながら、思い出す。  7年前の夏、中一の時の、部活の合宿。  県営の、山の麓にある宿泊施設「いずみの里自然の家」。  体育館もあって、小中高と学校行事でよく使われる場所。  私の中学は、そこで部活の合宿をしていた。 「莉緒の所、4人でしょ。綾香も同じ部屋ね」  一部屋6人の部屋だった。部屋割りを決める時、マキが脅す調子で言い放つ。  確かにそうだけど、マキの所も4人だし、別にそっちでもいいじゃん。 「綾香と一緒の部屋なんて、キモくてやだよ」  そんな理由かよ。  マキは綾香を嫌っていた。  外見も、性格も地味な綾香は、部の中でも少々浮いていて、決まったペアもいなかったし、その日余った人と打ち合っていた。  部室でも、みんな固まってアイドルやリップクリームや、男の子の話で盛り上がっていても、一人外れて荷物の整理をしていた綾香。  私と陽菜、ゆきなと真理、4人黙っていた。みな思う事は同じだという事は確認しなくても分かっていた。  マキほどでないにしろ、綾香を快く思ってる人は誰もいない。  ましてマキは部内で学年一番の権力者、影響力も強い。 「じゃ、決まりね」  ドヤ顔で、満足げに去っていくマキ。  体育館の隅で、ラケットを持って一人で立っている綾香を見て、自分の中に嫌悪感が湧いてくるのを否定出来ない自分に戸惑いを感じた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加