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家に無事に帰りつき、車をバックしてエンジンを切った。
ルームミラーにぶら下がったくまのキーホルダー、お母さんこんなのぶら下げてんだ。
クマのタオルを首にかけた綾香を思い出す。
今思うと、綾香はキャラ物が好きだったのだろう、そう思うと普通の中学生だ。
そう、普通の女の子だったのだろう。
そんな事を考えながら、車を降りた。
するとそこに、中年の女性が立っていた。
誰だか認識するのに、少々時間が掛かってしまった。
買い物袋が重く感じる。
「こんにちは」
「こんにちは」
声のトーンが下がる。
「おひさしぶりね」
返事をしなかった。
「明後日、成人式ね」
下を向いた。
「うちの子も、出てたらどんなだったかしら」
二枚しか入ってない服を持っている手。掴んでいるのが苦しい、肩にかけたバックがめり込みそうだ。責めているようにも取れる言い方に、また重力がかかった気がした。
「……知ってる事は、全て話しました」
そう、知ってる事は、すべて警察に話した。
「悪かったとは、思ってます。一人で行かせた事も、何もかも……」
そう、悪かったとは思っている。
一人で行かせた事、マキに歯向かわなかった事。
「失礼します」
振り返らず、逃げる様に家に入った。
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