ハーレム

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ハーレム

美女に囲まれるってどんな気分なのだろう?  一度はハーレムを体験してみたい、そんな馬鹿な事を考えていた昼下がり。キッチンにいた妻がコーヒーを淹れてくれた。 「どうぞ」 「ありがとう」 「ねえ、あなた。今から友達が遊びにくるの。三人来るから少し騒がしいけど我慢してね」 「ああ、分かった」 そして、三十分後。 チャイムが鳴り玄関のドアを開けると、三人の美女が視界に入る。 「お邪魔します」 「あっ、どうぞ」 初めて見たが、妻の友達たちはみんな可愛かった。 もしや、これはハーレムなのでは? そう思った次の瞬間、美女たちの隙間を縫って大勢の子供がなだれ込んできた。 どうやら、友達とは『ママ友』だったらしい。赤ちゃんから小学生低学年までの女の子ばかり、全部で八人。私の娘たちを合わせて十人の子供たちが一斉に騒ぎ出した。 『トイレどこ?』 「こっちだよ」 『のど乾いた』 「ジュースを用意してるから、ちょっと待って」 『お腹空いた』 「ほら、お菓子だよ」 『パパ、汗かいてるね』 「お前は黙ってろ」 ……これが、ハーレムというやつなのか? 平均年齢は五歳くらいだが、ハーレムと言っていいのか? 妻たちはおしゃべりに夢中で、こちらの戦場は眼中に無い。 『おもちゃとられた!』 「喧嘩しないで」 『お菓子無くなったよ』 「ちょっと待ってね、補充するから」 『あだっ、あだっ』 「えーっと、抱っこして欲しいのかな?」 『パパ、私も抱っこ』 「お前は後にしろ」 …… …… この状況は夜まで続き、ハーレムは憧れではなく恐怖の対象となってしまった……
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