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迷路
家族サービスの為、地元の小さな遊園地へ足を延ばした。
娘たちは幼いので、小規模な遊園地くらいが丁度良い。私はハイハイする次女とボールプールで遊んでいた。
暫くして、長女と遊んでいたはずの妻が駆けてくる。
「あなた、大変よ! あの子、迷路に入っちゃったの」
「何だと!?」
この遊園地の目玉アトラクションだ。小学生に大人気の迷路だが、長女はまだ四歳。出られなくなり、泣いているかも知れない。
妻に次女を任せ、私は迷路へ飛び込んだ。
小学生に合わせ作られているのだろう。天井が異常に低く、大人の私は四つん這いで進むしか無かった。両手両膝をつき先へ進む姿は、ハイハイする次女と変わらない。
だが、恥ずかしがってる場合では無かった。娘を救出するべく、大声で名前を呼び続ける。
娘からの返事は無く、暫くして壁にぶつかった。
……いや、壁では無い。よく見れば太ったオッサンのデカい尻だ。
「兄ちゃん、この先は行き止まりだから下がってくれんか」
尻が喋った!?
待て、落ち着け。尻しか見えないから、尻が喋った様に感じたのだろう。
これは不味い状況だ。閉所に長く居すぎたせいで精神がおかしくなってきている。
冷静になれ。落ち着いて、来た道を戻ればいい。
しかし、後方から怪しい気配を感じる。
無理やり首だけを動かして確認すると、ハゲたオッサンが道を塞いでいた。
何故だ!? 何故、小学生が遊ぶ迷路でオッサンばかりと遭遇するんだ!?
「ハァ……この先は行き止まりですか。仕事と家庭だけでなく、ここでも行き止まりだなんて……ハァ……」
深いため息を吐くな! 何があったか知らないが、私まで気が滅入るだろ!
その後も娘は見つからず、疲労困憊で迷路から脱出する。そして……
「パパ、お帰り。遅かったね」
娘は既に脱出していた。
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