無意識

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無意識

最近、四歳の娘がテレビの前から離れない。 何を見ているのかと言うと、日曜日の朝に放送している、幼児に大人気の魔法少女アニメだ。 そこまではいい。録画して繰り返し同じ話を見ているのも許そう。可愛い娘にテレビを譲るくらい、どうって事無い。 問題は別にある。一緒に観ないと娘が泣きわめくのだ。 テレビに集中しないと娘が怒るし、何度見ても魔法少女とやらを理解出来ない。 普段はニュースとスポーツ中継しか見ない私にとって拷問と言える。 そして、一ヵ月後。とんでもない事が起こった。 脳内で永遠と再生される魔法少女のオープニング曲。それを、会社で無意識に口ずさんでいる私がいた。 ふと我に返り、周囲を見渡す。隣の席に座っていた女性社員と目が合い、視線を逸らされた。 「待て、違うんだ!」 後ろの席に座っていた後輩が、笑いを堪えながら肩に手を置いてくる。 「好きなんですね。私の娘も見てますよ……プフッ」 「違うと言ってるだろうが! 私はニュースとスポーツしか見ないんだ、信じてくれ」 誤解を解こうとして泥沼にはまり、必死になって説明し続ける。 それは、どんな仕事よりも難しかった。
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