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福引
父ちゃんと母ちゃんに連れられ、車で家電量販店に来た。エアコンの調子が悪く、新しい物に買い換えるらしい。
七歳の妹と三歳の弟は嬉しそうだが、僕は乗り気じゃなかった。小学生も高学年になるとそんなものだ。休みの日くらい、家でのんびりゲームをしていたいと思う。だが、そういう訳にはいかない。
「お兄ちゃん、こっちに来て。このテレビ、すっごく大きいよ」
「にーちゃ、にーちゃ、おっきいよ」
「触るなよ、売り物なんだから」
妹と弟の面倒を見るのが僕の役目。イタズラをしないように見張っていると、父ちゃんが笑顔で戻ってくる。
「福引券を三枚貰ったぞ」
どうやら、無事に買い物を終えたらしい。僕たちは一枚ずつ福引券を渡され、レジの横にある抽選会場へ向かった。
先ずは三歳の弟に引かせる。
結果は五等で、駄菓子の詰め合わせ。下手に良い景品を当てるより嬉しそうだ。
次に妹が引く。
結果は五等で、やはり駄菓子。とても不満そうだが、まあそんなものだろう。
だが、僕は違う。普段の生活では運が悪く、ろくな目にあわない。でも、くじ運だけはいいんだ。
狙うは一等のゲームソフト。気合を入れ、願いを込めてくじを引く。すると……
「おめでとうございます! 特賞の自転車が当たりました!」
……
……
「えっ?」
父ちゃんと母ちゃんが後ろでヒソヒソと話している。
「ママチャリだ。家に送る場合は送料がかかるらしいぞ」
「車に載せられないしね。どうする?」
「ママチャリは要らないけど、辞退するのは勿体無いな」
そして、父ちゃんが僕の肩に手を置いた。
「お前が当てたんだから、頑張れよ」
……
……
「えっ?」
こうして、僕だけがママチャリで家に帰らされる。その間ずっと、くじ運の良さを呪っていた。
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