君が走る ぼくが走る

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 あの月明かりは太陽光が反射したものではない。人工的な光だ。  それは以前、宇宙ステーションから見えていた日本のような。眩い光に満ちている。  あそこには未来がある。  だからお父さん。  あなたの愛娘と行かせて。  あの眩い場所に。  あなたの娘は確かに優秀だ。  選ばれし民となれるかもしれない。  だがなれなかったら、どうする?  必要なのは能力だけではない。  財力だと言われたら。多額の賄賂を用意しているのか、お父さん。  だから行かせてくれ。  この子と生きるために。  このバイクに乗っていけ?  ダメなんだよお父さん。  自分の足で走って来られた者しか入園できない。そうなんだよお父さん。自力で歩けない者は資格すらない。  だからぼくたちは手をつないでいる。  うん。大丈夫。  任せておいて。  ぼくは見かけよりも力持ちだ。
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