第一章

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びくりと体が揺れて目を開けると、まだ室内は暗かった。遮光カーテンではない透の部屋は、日が出ていれば外の光が入るため、まだ日の出前なのだろう。 思い出そうとしてもどんな夢を見たかは覚えていてないが、最近夢見が悪く、起きても疲れが取れていない。すっかり目覚めてしまった体はもう寝直すことができず、透は起きて身支度を始めた。  こうして早く起きてしまった日は、早朝から会社に行くことが多い。途中で起きてしまうと、もう一度寝ようとトライしても時間がかかるのだ。 早朝で空いている車内の端の座席に座り、ぼんやりと電車に揺られる。 「つかれたな……」 ぼそりと呟いた透の声は、車内アナウンスに掻き消されるほど小さく、溜息のように漏れた。重たいビジネスバッグを枕のように抱きしめると、少しでも寝不足な体を休めるため、俯いて瞳を閉じた。
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