第二章

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「体、きつくないですか?」  就業後、残業の申請をしてツアー台帳を黙々と調べていると、突然伊沢が口を開いた。普段、あまり仕事以外の質問をされたことがない透は、伊沢からの言葉に眉を顰めた。 「顔が赤いです。今日はもう帰りましょう」 「でも……」  きりがいいとは言えない状況でそう言われ、困惑する透を無視して、伊沢は手元の書類を片付けていく。 「透さんのパソコンの稼働時間、勝手に調べました。ここ一ヶ月、早朝に来て深夜に帰ってますね」 「う……」 退勤記録は、過度な残業がバレないように適当な時間で打刻していたが、パソコンのログインログアウト時間までは偽ることができない。伊沢は、その記録を調べたのだろう。
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