第二章

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「ごめん……」 「さっきから、ごめんばっかりですね」 「あ……」 「汗かいてますよね。着替えないと体冷やします」  先ほど額に手を当てた時にわかったのだろう。じわりとかいた汗が肌を冷やし、寒かった。 「拭くから、脱いでください」 「え……」 よく見ると、伊沢は、寝間着と絞ったタオルを持っていた。 「タオルが冷めるから、早く」  戸惑う透を、伊沢は無言で見下ろしてくる。男同士で恥ずかしがるのもおかしいだろう。ワイシャツとアンダーシャツ、スラックスまで一気に脱ぎ、下着だけを身に着けた状態になった。室内は温められているものの、半裸では肌寒い。 手にしていた熱いタオルで首や背中を拭き始めた伊沢に、「自分でやるから!」と焦ったが、聞き入れてもらえなかった。 人に看病されることなど滅多にない透は、どうしたらいいのかわからず、されるがままになっていた。 無言で、仕事のようにてきぱきとした動作で拭き上げると、伊沢の寝間着を着せられた。女性のLサイズでも余裕で着られる透に、伊沢の服は大きすぎるのだが、堅苦しいスーツではなくなってだいぶ楽になった。
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