第二章

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第二章

全く同じ文面で二通目の怪文書が届いたのは、一通目がきた一ヶ月後のことだった。 この一ヶ月間で、韮崎が担当しているツアーの入出金を調べ、調査会社に身辺調査も依頼した。しかし、結果には特に気になる点はなかった。調査結果は室長に報告済み、怪文書の差出人を調べる労力も無駄と判断され、一旦片付いたはずだった。たった二日前の出来事だ。 「二通目が届いた以上、放置しておくわけにはいかないわね……。今回はもう少し踏み込んで調べてくれるかしら。手間がかかる作業だから、伊沢くんと協力してね」 室長の指示により、透は再度この件を調べることになった。 ――伊沢と、一緒にか……。 透は伊沢の関係は相変わらずだ。時折こちらに厳しい視線を送ってくる伊沢に、透は不安な表情を返すことしかできない。嫌われていることを自覚しているのに、自分以外には笑顔で社交的な伊沢が、何を考えているのか気になってしまう。 ――先輩として、毅然とした態度で接したいのに……。 小部屋の外で、他の社員と話しているのを見ると、目で追ってしまう。伊沢が異動してきてから一年、ずっとその調子だ。
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