第1話 3.守護像の目覚め

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第1話 3.守護像の目覚め

「うん、良い感じ」    シオは凝り固まった肩を解すように、大きく伸びをした。  手は削り出した石の粉で白っぽくなっている。  頬や鼻の頭にも少々粉が付いているが、シオは気にすることなく手元の守護像を見てニンマリした。  リス型の守護像は、仕上げの微調整と磨きを残すのみとなっていた。  今朝は曖昧だった毛並みや手の形もくっきりとしている。    背に入っている独特の蔦草模様も彫ったとは思えないほど緻密に絡み合い、所々咲く小さな花は立体的で本当に咲いているかのようだった。  丸みを帯びた五枚の花弁が西日にきらめく。  いつしか日は傾き、室内を橙色に染め上げていた。 「ん?なに?テト」    温かい暖炉の前に陣取り寝入っていたテトがおもむろに起き出した。    今日は接客お休み日らしい。ずっとそばにいる。    テトは、んー、と手足を突っ張って伸びをしたかと思うと、トンと机に飛び乗った。    守護像に鼻を近づけ、フンフン、と匂いを嗅いでいる。耳もピンと前を向き、興味津々のご様子だ。    ちょいちょい、と前足でリス型の守護像をつついている。    テトは、守護像に対しての好奇心が強いようで、シオが造った守護像にはいつも積極的に絡んでいた。  自分に対する態度との違いに、毎回複雑な心境になるシオである。守護像に対する興味の半分でも良いから自分に向けて欲しい。  石が好きで守護像も大好きなシオとしては、テトとはもっと仲良くなりたかった。
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