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制作期間は最低でも一ヶ月は欲しい、と前から言ってある。
技術的には、女の拳ほどの大きさの守護像であれば、一週間という期間で間に合わせることも不可能ではない。
しかし、石と向き合って丁寧に作り上げていきたいシオにとって、そういう流れ作業的な造り方はしたくなかった。
できれば、どんな人が守護像の契約者になるのかも知った上で、守護像を彫りだしていきたかった。それなのに、である。
今回はサプライズにしたいから、と契約者本人は店にすら来ていない。
シオは飲みかけていたスープを勢いよく流し込むと席を立った。
隣で眠り込んでいたはずのテトもいつの間にか起きて椅子から飛び降りた。
「え、シオ、もういいの?」
クロードの前に熱々のコーヒーを置きながら、ミハルは慌ててシオを引き留めようとする。
「おかわりは?」
まだいっぱいあるよ、と鍋の中を見せるミハルに、シオは首を振った。
もう少し味わっていたかったが、
「ごちそうさま」
今日のスープも美味しかったよ、と声を掛け、シオは台所を後にした。テトが続けて外へ出る。
職人として、約束の日までに依頼品を完成させるのは当たり前だとシオは思う。だが、期日に間に合わせるためにいい加減な仕事をするのはごめんだった。
クロードに言いたいことは山のようにあるが、言ったところで期日が延びるわけではないし、守護像の完成度が上がるわけでもない。
それなら少しでも石に向かう時間を増やしたかった。
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