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シオとテトが出て行くと、ミハルはため息をつきつつ椅子に座った。
コーヒーを飲みながら気怠げに手紙に目を通すクロードに批難の視線を投げかける。
「ちょっと、クロードさん。僕はシオに徹夜しないように言って欲しかったんですけど?」
逆効果になってるじゃないですか、と口を尖らせるミハルに、クロードはフンと鼻を鳴らした。
「私が言ったところで聞きやしませんよ」
それは確かにそうなのだが、視線を手紙に落としたままの、なんとも投げやりな返答に、ミハルはムッとする。
「そもそも無茶な依頼は引き受けないでくださいって僕からもお願いしましたよね?」
シオは石のこととなると周りが見えなくなりがちだ。
親方の工房で人目が多かった時でさえ、寝食を忘れ彫像に没頭し、倒れたのは一度や二度ではない。
親方の工房を出て1年、シオが倒れることがなかったのは、ここまで切迫した依頼は受けないようにしていたからだ。
「クロードさんはシオが倒れても良いっていうんですか?」
クロードは手紙から目線を上げ、
「ミハル君、シオ君に対して過保護すぎません?」
残念な者を見るようにミハルを見てきた。
「心配しすぎですよ。シオ君だって子供じゃないですし、疲れたら休みますよ」
クロードは言うだけ言うと、再び手紙の束に目を落とす。
「だと良いんですけど」
ミハルは重たい息を吐いた。
シオは、このまま順調にいけば明後日までに守護像を造り終えることができると考えているようだったが、ミハルは嫌な予感がしてならなかった。
そして残念ながら、ミハルの勘は的中することとなる。
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