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「おはよ、シオ」
言いながら顔を覗かせたのはお小言の宝庫、茶髪の青年―ミハルだった。
親方の工房にいたときからの付き合いで、今はシオの工房で雑用全般をこなしてくれている。それは感謝しているのだが・・・。
「お、おはよ、ミハル」
「朝ご飯、できたよ」
「・・・」
「?なに?行かないの?」
挨拶の後に続く小言に身構えたシオだったが、何もなかった。
今日はお小言ナシ日らしい。
もしかしたら徹夜したことに気がついていないのか、それともミハルが心を入れ替えてくれたのかもしれない。
「い、行くよ!朝ご飯食べたいもん」
シオはホッと胸をなで下ろし、ミハルに続いて部屋を出た。
中庭を抜けて台所へと向かう。台所から漂ってくるパンの香りに自然と顔が緩んだ。
(守護像もだいぶ形になってきたし、朝から小言も言われないし、なんて良い1日のスタートだろう)
「あー、お腹空いたぁ」
朝ご飯何かな、と上機嫌でミハルの後ろから台所へ入ろうとした時、くるっとミハルが振り返った。
「そりゃそうでしょ。一晩中寒い所で作業してたんだから」
しかめっ面で言われ、シオの笑顔が固まった。
(バレてた・・・)
1日の始まりはやはりミハルのお小言から始まるらしい。
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