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見られると余計に落ち着かなくなってくる。ソワソワと何度も無意味に組んだ指を入れ替えていると、その人は軽く息を吐いた。
「いいのよ、気を遣ってくれなくて。そういう反応には慣れているから」
寂しそうな声音にハッと顔を上げると、憂いを帯びた瞳に視線が縫い止められた。
「でもね、仕事柄、こういう方が都合が良いのよ」
硬直していると、その人はゆるりと一歩こちら側に踏み込んできた。ミハルの間合いに入り込むと、頬が触れ合うほど近くに顔を寄せ、唇が耳元に寄せられる。
「男も女も、これだと油断してくれるから」
「!」
秘めやかな声つきに、自分の意志とは無関係に心臓がドキッと跳ね上がる。
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