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ミハルが慌てて囁き声の入ってきた耳をパッと両手で覆うと、その人はスッと身を引き、愉快げに微笑んだ。
「ふふふ、さてと。お遊びはこれくらいにして、悪いけど、この荷物は自分で運んでもらえるかしら、僕ちゃん?」
「えっ……?」
突然の言葉にミハルは目を瞬く。
(今まで僕は遊ばれてたの⁉ いやいや、それ以上に何か耳を疑うようなこと言ってなかった……⁉)
その人は、固まるミハルを一瞥すると、気怠い様子で頬に落ちかかる髪を細い指で耳に掛けた。その仕草がじれったいほどゆっくりで、ミハルは目で追わずにはいられなかった。
「知ってると思うけど、あたしの本業は情報を入手して渡すこと。品物集めは本来の仕事じゃないのよ」
艶めく唇から紡がれる言葉が、頭に反響して素通りしていく。
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