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第1話 2.工房の仲間
「ちゃんと寝ないと身体壊すよ?今日で何日目だと思ってるの?」
「そんなのいちいち覚えてない。ねぇ、テト?」
シオはミハルからのお説教を受け流し、隣の椅子でうつらうつらしている黒猫、正確には黒猫型の守護像に同意を求めた。
彼女は親方が作った守護像で、シオが初めて守護像を見たときに棚の上で丸まっていた子だ。
今は香箱座りをしているので見えないが、普通の猫とは異なり、肉球は乳白色の星形で、尻尾が根元から二股に分かれ、胸元には幾何学模様が美しい月が彫られていた。
親方渾身の一作で、何度も売りに出そうとしたらしいのだが、引き渡しの日になると彼女はどこかへ姿をくらまして、結局上手くいった試しはなかったという。
そんなこんなで、売れ残り扱いを受けていた彼女だが、シオのことを気に入ったらしく、工房を出るときに付いてきた。
他に売りに出してもまた戻ってくることは明白なので、親方が餞別代わりにと彼女を譲ってくれたのだった。
テトは守護像として工房を守るだけでなく、今や工房の看板娘となっている。
お客には愛想の良いテトだが、今は虹色の瞳でシオを一瞥しただけでまた眠りに戻ってしまった。
自分のことを気に入って付いてきたはずなのに、ずいぶんな態度だとシオは思う。
「都合が悪くなるとすぐテトに話を振るんだから」
ミハルは呆れながらシオに木の器を渡した。
湯気が立ち上る器には、黄色いスープがなみなみと注がれている。
木製のスプーンでとろみのついた液体を口に含むと、ふわりと甘みが広がった。
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