第1話 2.工房の仲間

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 通常、独り立ちできるほどの腕を持った職人であれば、親方のようにパトロンとの仲立ちから、客への売り込み、売り上げの勘定まで一手に担う。    しかし、腕はピカイチでも他がからっきしなのがシオである。    石にかまけて経営もろくに考えず、石に埋もれて息絶えるシオの姿が目に浮かんだ親方から、巣立つ条件として出されたのがクロードを経営者にすることだった。    豪商一族の端くれらしく、顔も広く、商才もあるクロードのおかげで、シオの工房は1年ほど経った今でも、小さいながらも潰れずにいる。 「しかしよくもまぁ、君たちも飽きませんねぇ。昨日も一昨日も同じ様な会話をしていましたよ」    くぃ、と銀縁眼鏡を押し上げて呆れた顔をされるが、聞いていたんならさっさとと入ってきて小言を止めて欲しかった。 「クロードさんからも言ってくれませんか。僕が言ったところで全く聞いてくれないので」    告げ口をしながらクロードのためにコーヒーを入れるミハルに、シオは閉口する。 「そうですねぇ」    クロードがこちらを値踏みをするように見てきた。 (何か文句でも?)    シオはクロードを睨め付けた。町娘ならその視線を浴びただけで耳まで赤くなるのだろうが、生憎、シオはクロードにこれっぽっちも興味がない。  それどころか、あまり好ましく思っていなかった。 「職人は今のところシオ君しかいませんからね。ちゃんと仕事をしているのなら、文句は言いませんよ」    クロードの言葉にミハルは気落ちしているようだが、シオはその言葉に引っかかった。
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