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「何だか含みのある言い方な気がするけど」
ご明察、というようにクロードは極上の笑みを貼り付け、顔を近づけてきた。
「明後日、例の守護像を引き渡すということは分かっていますよね?」
シオは静かに目線を外した。
例の守護像とは、ついさっきまで彫り進めていたリス型の子である。
「……分かってるよ」
自然と声が小さくなってしまう。
そんなシオを見て、クロードは笑みを深くした。
「ということは、明日、最終確認をすると言うこともー」
「分かってる」
強い口調でクロードの言葉を遮った。笑顔の重圧がのしかかる。
守護像には、契約者の護衛をする守護像と、契約者が住む家を警護する守護像の2種類が存在する。
守護像の大きさや性格でどちらの守護像になるかは変わってくるのだが、どちらにしても安価な物ではない。買い手はある程度の財力を持つ者がほとんどだった。
今回の顧客も例外ではなく、この地域で古くから地主をしている老人だ。金に加え、権力がある。
そのため、クロードはいつも以上に神経質になっているのだ。
しかしこの金持ち老人は、自分のために守護像が欲しいわけではないらしい。
なんでも、隣村に住む娘夫婦に初孫が生まれたらしく、その子のための守護像を所望とのことだった。
生誕100日目に合わせたい、という親馬鹿ならぬ孫馬鹿の、もうろく爺に多めの報酬を握らされ、クロードがすんなり引き受けてしまったのがちょうど一週間前のこと。
クロードのこういうところがシオは気にくわなかった。
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