写真でめぐる昔旅♪~伊勢神宮その2~

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 いざお手水、と気持ち盛り上がった私は、トコトコと石畳を歩いていった。  今回、共にやってきた弟は、後ろをそろそろとついてくる。  ふと振り返ると、彼は立ち止まって何やら木の切り株を見ていた。 「どうしたの?」 「いやあ……苔がすごいなあと思って」 「コケ?」  長い年月をかけて形成された命の再生、確かに見事ではある。  深い緑、やわらかい緑、いろんな緑があるのもまたきれいだ。  だがしかし……。  じっと苔を凝視したまま、彼は全く動かない。  見るに、かなり心を奪われている様子である。  ん……そんなに?  ふと、弟の幼少期を思い出した。  アリの行列を見つけると、しゃがみ込んで凝視したまま動かない。両親が行くよ、と声をかけてもまるで無視である。  あれからウン十年、彼もすっかりいい歳になったが、男の子ってのはいくつになっても根本は変わらないらしい。  しかし何でまた苔なのだろう。  顔を近づけ、いろんな角度から苔を見ている弟に、早く行こうよ、と言う気にもなれない。  いくら自分がそこまでにはならないとは言え、本人が楽しんでいるのを遮るのは、野暮というものではないか。  仕方ないので、私もどれと眺めて付き合うことにした。  多分、私が古代を感じさせるものにテンションが上がっているのと、同じなのだ。  心の琴線に触れるポイントとは、こんなに人それぞれ違うものか。  そう考えると、ちょっと面白いなあと思う姉ちゃんなのであった。 ↓弟が凝視していた切り株。確かに立派だけど……。1a419383-f1d3-45e9-a0bd-1d6a96e1c10c ↓いや、まあ……いいけどね。a230e823-4b9a-4183-bbec-1600622e2a84
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