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駅前に車が到着したのは、何と発車5分前であった。
「うぉーっ、ギリギリ!」
そう言って2人して笑えるのだから、我ながらいい友人関係だと思う。
「遊びに来てくれてありがとう!」
「こっちこそ、ありがとう! お世話になりました!」
のんびり別れのあいさつをしている場合ではない。
バタバタとキャリーバッグを引っ張り出す。
「また来ていい?」
「来て来て!」
「きのこ、11月くらいかな?」
「その辺も、わかったら連絡するよ!」
これから窓口に行って、乗車券を買わなければならない。
「じゃあね!」
「気をつけて帰って!」
ドアを閉めると、私はキャリーバッグを引いて駅に向かった。
……重っ!!
おそらく汲んだ水のせいだ。大小ペットボトル合わせて、4L。そりゃ、重いわ。
こういうとき、地方の小さな駅はありがたいと思う。
道から入り口が近いからだ。
これが新宿だったら、西口ロータリーまで車をつけたとしたって、人でごった返す広場を突っ切って、改札に向かわなければいけない。
さらに行き先が埼京線だとしたら、完全にアウトである。
入り口に入ってすぐ横に、窓口があった。
浅草までの乗車券を買う。
「ふう」
時刻は発車2分ほど前。
何とか、予約した席に座ることができた。
ひと息ついたら、のどが渇いてきた。
「あ、お茶買うの忘れた」
しかし、今から出て行って買いに行く時間はなさそうだ。
「トホホ」
少しがっかりして――。
「いや、あるじゃん」
荷台に上げたキャリーバッグを下ろして(これがまあ重い)、中から500mlペットボトルを出した。
「ふふふ、特上の水が」
数時間前に汲んだ水が、まだ冷たい。おいしい。
グッジョブ、私。
電車が発車した。
一応、Tにちゃんと電車に乗れたことを、伝えておく。
まだ、車内は閑散としている。
おそらく、日光でまたどっと増えるのだろう。
それまでの間に、1つだけおにぎりを食べた。
いや、おいしいぞ。やはりと言うべきか何と言うべきか。
のどかな自然においしいご飯。ゆったりした時間の流れる村を離れて、またあの雑多な都会に戻るのかと思うと、少し気が滅入る。
まあ、いい。また来よう。
彼女がおいでと言ってくれるうちは、楽しみの1つにして、何度でも遊びに行けばいい。
次の目標は、きのこをはじめとした秋の味覚だ。
私とTの予定が合えば、今年にでももう1度行こうと思っている。
美味しい野菜とご飯が私を待っている。
’19.07.13~14→福島の友人に会いに行く Fin.
~*~*~
↓おまけ:今回のお土産@熊野自宅、IHの上にて
(味噌と梅の漬物を入れているストックバッグが地味にIKEAという……)
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