01. そのブーケは手に余る

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01. そのブーケは手に余る

 ある大安の日。都内の式場で盛大な挙式が行われていた。多くの友人たちに見守られる中、祭壇前に並び立つ新郎と新婦が幸福にはにかみながら、誓いの口付けを交わす。こうして今日この日、この二人は夫婦となった。 「二人ともおめでとう!」 「幸せになれよ!」  挙式の終盤。腕を組み寄り添いながらチャペルを退場する二人を、彼らの友人たちが出迎えた。祝福の言葉とフラワーシャワーに包まれた二人は、彼らに感謝の言葉と満面の微笑みを返していく。  花道を抜けると、今度は参列者のうち女性のみが集められた。新婦によるブーケトスが行われるのである。女性たちから我こそはと隠し切れない気迫が漂う中、背を向けた新婦がブーケを頭の上に掲げた。 「いきまーす!」  新婦がブーケを大きく放り投げると、ブーケは女性たちのもとへと飛んでいく。大きく円を描いたブーケは、女性たちの後方へと落ちる。受け取り損ねた女性たちの手から手へと渡り、最終的にブーケが辿り着いた先は、彼女たちより一歩後方で待機していた女性であった。 「あっ……」  欲しがっていた女性たちも、残念そうに眉を眉尻を下げながら彼女に拍手を送る。そんな空気を察した彼女もまた、引きつってしまった表情を一瞬のうちに笑みに変え、見た目には嬉しそうにブーケを受け取ったのだった。
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