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「お疲れ様! 皆頑張ってるな!」
入室するなり、溌剌とした声で笑った男性に、視線が集中する。
見覚えのない若い教師だ。
誰だろうと思案していると、その後ろから堀米が現れた。
なるほど彼が、堀米の連れてきた生徒会顧問らしい。
時計を見ると、定刻の十六時半ジャスト。
作業に当たっていた面々の集中と緊張が解け、場の空気が少しだけ緩む。
「お疲れ様でーす。合宿課題について、今時点で絞った案について発表してもらいまーす」
間髪入れず、柚木が手を叩いて注目を集めた。
今来たばかりの顧問も、うんうんと頷いている。堀米が事前に説明しておいたのだろう。
「じゃ、『一年生オリエンテーション合宿』の担当班から頼む」
話を振られた私は、八重野と頷き合う。
そして全体を見回し、発表を始めた。
「はい、課題案は三つあります。
一つ目はコミュニケーションとして『生徒三人への自己紹介』。
二つ目は実力テスト返却を受けての『課題把握と今後三箇月分の勉強スケジュール作成』。
三つ目は自立的活動として『生徒主導のキャンプファイヤー準備・片付け』。
この案に問題があった場合、次点の案は──」
黒板のメモを手で示しながら、一つひとつ説明する。
顧問は少し目を見張ると、にかっと爽やかな笑みを見せた。
「──以上です」
「おお、しっかり纏まっているじゃないか!」
「あ、ありがとうございます!」
思いがけず顧問に褒められ、恐縮で頭を下げる。何とか形になり発表できて良かった。
「お疲れ。次、『二年生フォローアップ合宿』担当班の先輩、お願いします」
柚木は簡潔に労いを口にし、さっさと進行した。
先輩方も同じように、大体の課題案を纏め終えていたようだ。
『夕食の準備・片付け』や『合宿そのものの課題検討』など、課題の難易度は一年生のものより若干高めに設定されていた。
全学年分の発表が終わる。
聞き終えた顧問は、満足そうに笑った。
「今年は色々と案が集まって、随分賑わったみたいだな。それなのに、こんなに早く纏めて素晴らしい! 明日早速、先生達に伝えるよ」
顧問の言葉に、誰もが顔を明るくする。
時刻は十六時五十分。
本当に、十七時前に話が纏まった。
驚きと喜びで呆けていると。
柚木が藁半紙を各班に配付していく。
『【自主課題案】一年生オリエンテーション合宿』
ゴシック体のタイトル踊る紙には、本日の日付と、『課題案』『目的』と題された三×二の空き枠が刷られていた。
「先生、後は今の内容を紙に纏めて職員室まで持って行きます」
プリントを配り終えた柚木は、時計を指差して声を張った。
「各班、今の発表内容をプリントに書いて、オレに提出してください。今日はここまでにして、皆で十七時に帰りましょう」
+++
「──はい、よろしくね」
「おう、お疲れ」
八重野が、黒板から課題案を写し取り。
柚木に提出したところで、全学年分の取り纏めが終了した。
時計は十七時を指している。
上級生達は、懸念事項が片付き日を終えられることに歓喜し、沸いていた。
対する一年生組は、妙に冷静だ。
だるそうに伸びをしながら、早口で指示を出す柚木に、堀米と八重野が応えている。
「じゃ、帰りがけに職員室に寄って提出するか。サキお前、明後日の昼、放送室借りる予約しとけよ」
「了解。あと消防署への届出、受理の連絡が来てたって」
「お、早いな。課題が承認されたら、一度合宿所に段取りを報告しなきゃな。八重、合宿のしおりの進捗は?」
「余興に変更なければ、去年の使い回しだからほとんどオーケーよ。後は課題の部分と、課題によって変わるところくらいかしら」
「サンキュ。明日一度、先輩達に見てもらうか」
手際よく、話が進められる様子を。
私は呆然として、ただただ眺めていた。
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