半身不在

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 そうやって散々に振り回されているくせに、当人は未だにキリにベタ惚れなのだ。会えば必ず惚気話ばっかり聞かされるし、「大事すぎて他の男に見せたくない」っていう理由で、ちゃんと紹介されたこともなければ、写メすら見せてもらったことがなかった。ちょっと異様なくらいの溺愛っぷりも相まって、会わせない宣言をされるまでもなく、会う気なんか全然なかった。  そんなだったから、僕はぶっちゃけ、宮野キリに対していい印象を少しも持っていない。できれば通と別れてやってほしいとすら思っている。いなくなる度に、このままどこかへ消えてくれればいいのにと、本気で願ってしまっていた。  彼女が本当の意味で通の心を癒しているのなら付き合うことに意義はないけれど、今は悪影響しか与えていないような気がするのだ。部外者の僕なんか馬に蹴られてろって言われようが、だ。  心配なんだ、通のことが。  まだよく言葉も操りきれてなかった頃からの友人で、僕よりでっかくなったくせに、ガキの頃のまんま、気弱でおとなしい、あいつのことが。  大切な友達が、こんなことで駄目になってしまうのは辛い。それに多分、僕に全然責任がないわけじゃないのだ。  その責任をとるべきときが、今やって来たということかもしれない。  僕は衝撃のあまり固まってしまった喉をなんとか動かして、電話の向こうのキリに告げた。 「…わかった。いまから、君たちの家に行くよ」
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