30人が本棚に入れています
本棚に追加
高校が別になってすぐに現れた“新しい友人”は、まるで僕のいない隙間を埋めるように通と接していた。学校ではもちろんずっと一緒だったと言うし、僕が都合で行けなくなった約束ごとも、代理はいつも彼女だったそうだ。そのうち「こっちの友達と行った」場所がどんどん増えていくのを、複雑な気分で聞いていたのだった。
必然的に誘うことも誘われることも減っていったけど、親交が途絶えることはなかった。途絶えさせてはいけない気がしたし、通の方も電話やメールのやり取りを変わらぬ態度で続けてくれていた。ただ、その“友人”についての話は、爆発的に増えていったんだ。
「たくさん話を聞くうちに、あれ? って思いはじめた。その“友人”の言動に疑問を抱くようになったんだ。以前に僕が話したエピソードが、そっくりそのまま“友人”の体験談になってたりしてたから」
「……」
「だからこれは、本当はそれほど親しくない人のことを“友人”だって言ってるだけなのかなとも思ったんだ。話をかなり盛っちゃってるんじゃないかって。ちゃんと僕以外の友達作れよ、とかさんざん言ってたから、僕に心配かけないように、とかさ」
キリは、眉根を寄せて視線を下げている。唇をぐっと結んで目を伏せている様子は、なんだか叱られている子供のようにも見える。別に責めるつもりはないのに、泣きそうなのを堪えていたら、自分でも嫌な奴だと思うくらいに酷い口調になった。
「それが真相なら、その方がずっとよかったよ」
僕はそこで一息入れて、鼻を啜った。もっと言葉を選んで言うはずだったのに、全然配慮が至らない。
「…え…どういう、こと…?」
キリは、片手で口許を被い、聞き取りづらいほど小さな声で訊いた。彼女の想定していたものとは全く違う展開に、少なからず混乱しているようだ。
「どういうことかは、君だって知ってるはずだ。…もちろん、通の居場所も」
最初のコメントを投稿しよう!