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第一話 絶対参加!
とある高等学校のとある教室に、発足したての『リレー小説部』が、───まだ、無かった。
そう。
まだ、発足前。
高校一年生の男子生徒が、職員室から出てきた。
「失礼しました……」
えらく元気の無い声を、発する彼の名前は、雪山。
「くそっ!」
雪山は、足元で蹴りを空振りさせた。
その雪山の手元から、一枚の紙がヒラリと舞った。
雪山は、歩き出した。
すると、そこにやって来た別の男子生徒が声を掛けた。
落ち着いた話し方だった。
「おい君、何か落としたよ。」
その瞬間、ピクリと反応した雪山は、オーバーに仰け反りながら、振り向いた。
「あれれ~~、見ちゃった~?!」
「何だ、そのわざとらしいを通り越して、わざとな言い方は。」
何処かの小学生探偵染みたふざけに、落ち着いたままツッコミを入れた彼は、落ちた紙を指さすが、落とした当人である雪山は、拾おうとしない。
「……ったく」
しばらく、沈黙した後、ツッコミ役を担当した彼は、仕方なく紙を拾った。
「ん?部活動発足条件?」
醒めたようなその目で、紙に書いてあることを彼は読んだ。
部活動発足の条件について書かれた紙だった。
落とした本人である雪山が歩み寄って話しかける。
「実は、そういうことなんだよ。もう、分かるだろ?」
「いや、微妙に分からん。」
相変わらず、冷めた声で答えた。
気持ちが落ち込んでいくように、声のトーンを更に落としていた。
「今、職員室で、部の発足を頼んできたら、その紙を渡されたんだ。部員が足りないってさ」
両手を低く上げて、首をふり、やれやれといった仕草をしながら、雪山は話す。
醒めた目付きの彼は、手にある紙を見た。
『・部員は、最低3人必要』と、書かれていた。
「まあ、これで二人揃ったから、後一人だな!一緒に探そう!」
雪山は、醒めた目を持つ彼の肩に腕を掛けた。
彼は、冷たい声を吹き掛けた。
「まさか、僕を入れたつもりか?そんなんじゃ、いくら部員を増やしても、架空部員だけだぞ。」
「架空部員て!せめて、幽霊部員だろ!」
醒めた目が細まり、顔がしかめられた。
「どうでも良いけど、耳元で叫ばないでくれ。」
彼は、そう冷たく言いながら、肩の腕を払って距離を取った。
「あ、わりぃ……」
雪山が、謝った。
醒めた目を持つ彼が、紙を差し出し、紙の持ち主である雪山が受け取った。
雪山は何気なく、話を続ける。
「まぁ、幽霊部員は、受け付けないけどな。」
「何の部活だ?
一応、聞いてやろう。」
「リレー小説部。
俺が部長の雪山だ。」
「(仮)を付けとけ。」
「そこ、こだわる?!」
「どうでも良いが、ポイ捨ては、やめろよ。まあ、当たり屋というか、詐欺というか、わざとらしいというよりは、わざとだな。」
「なんだ、バレたか~」
「わざとバラしてたんじゃなきゃ、引くな。」
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