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虫螻
バイク窃盗および、ひき逃げ犯たちが捕まって一週間。
物陰から交差点を眺めるカトリィヌは、通勤や通学途中とみられる大勢の人たちの中に、登校班らしきグループの中で笑う少年の姿を見つけていた。
交差点の真ん中あたりで、少年は携帯をポケットから取り出した。画面を見るや否や走り出し、登校してきた道をそのまま辿って帰路につく。
少年につけていた蚊から虫の知らせが届いた。
画面には『母さんが目を覚ました』と簡潔に表示されていた。
息をなでおろした彼女は、少年につけていた蚊に対して、本体である自分の所に戻ってくるよう指示を出す。
「半分成功、半分失敗……これで報酬を全額いただくわけにはいきませんわね。あの親子はこれから色々と物入りでしょうし……プラスマイナスゼロと言うことで、このお金は全額返しに参るとしましょうか――」
カトリィヌがくすりと笑う。
少年の頬から蚊が飛んでゆくと、そこには赤い虫刺されが出来ていた。
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