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 5月9日――。  この日は、私にとって人生最良の日だった。 「ドクター、何をニヤニヤしてるんですか?」 「……あ、いや、何でもないよ、ロマンス」  そう、この子――ヒューマンタイプロボット、製造ナンバー【ROMA(ロマ)-N3(エヌスリー)】、愛称ロマンス――が完成した日。  苦労して造ったが故に、ここ数日間、何の問題も起こらず彼が起動していることが、この上なく嬉しい。  ロマンスを造るに当たって、私はあるひとつの事柄にのみ重点をおいて研究を重ね、他のロボットには類を見ないくらい人間らしくした。我ながら病的だったかも?とさえ思う。  聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚、それに感情…etc…etc…。  これらは、私がロマンスを造る過程において最も苦労した項目だ。  その他の知識などはおいおい学習していけばよい事だと思う。  そんな彼と暮らし始めたのは5日ばかり前の話。  で、私は昨日嗅覚の具合を知るために、食べ終わった後の皿についた残り()を利用して、彼に桜餅の匂いを教えてやったのだ。  まぁ、たまたま目に付いたからそれを使っただけで、この匂いを教えたことにはさしたる意味はなかったのだが。 「ドクター、今日はスーパーって所に連れて行って下さるんですよね? 桜餅、僕にも買うことが出来るでしょうか?」 「う~ん。そうだな。心配はないと思うぞ? お前は金の概念も分かってるんだしな」  彼がこんなにも桜餅に興味を持つ、というのは私にとっては予想外のことだった。それに――。
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