たとえば

苦労が多いのはすぐに見て取れた。

毎日必ず、低用量ピルのごとき抑制剤を食事毎に服用していたから。

「忘れると大変だから」

女性が定期的な痛みを軽減する様に、Ω特有のヒートと呼ぶ発情期のコントロールを行う薬。

幸いにも相性が良く、副作用もなく使用していると見せられた薬は、これまたピルの様に数字が刻印されて三ヶ月分が順番に使われていた。

「大変だな」

オウム返しに答えはしたが、その時は絶滅種と揶揄されど、自分達βと変わりはしない人なんだと思った。特別性は見られず、ただの人かと不謹慎にも思ったが。

薬とは相性が良いと告げた通り、変調を来している所は一度も見ていない。その為に重要性を軽視し、自分の進路がどうしたものかを考えない馬鹿が、薬に頼るのは甘えだとの根性論を持ち出して抑制剤を捨てる暴挙を行ってしまった事がある。

知識の不足を認めず、思う様持論を振りかざしたそいつは次の日から姿を見なくなった。

当然だろう。

人の人生に関わる大切なものを軽んじる輩と、肩を並べて学ぶ等したくもない。

相馬自身が、小児喘息で苦しんだ過去を持つから余計に強く感じた。