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「今岡さんが言うには、『ハヤシライスって海外で生まれたけど、日本人に合うように改良されてるでしょ? 私もハヤシライスのように、洋食だけじゃなく意外と和食も上手いんだよっ!』って、自分の得意料理のレパートリーの事を言ってたんだってよ」
実際、ことりさんの作る和食もザ・おふくろの味って言う印象で、飽きの来ない、いつ食べても微妙に味付けが異なっているが、どれも「美味しい」と言わせてくれた。
実は、これがアカネさんにヒントを与えてしまったようだと知るのは、結婚を直前に控えたような時期になってからだった。
アカネさんからの猛アタックもあり、めでたく大学卒業を待ってからゴールインする事になった僕たちだった。しかし心のどこかや頭の片隅から、ことりさんの記憶が尾を引いているようだった。
アカネさんに恋心が生まれる最中に、僕は「忘れなければ……」と言う想いを強く、呪術で封じるように無理矢理忘れ去ろうとしていた。アカネさんには悪いが、そのような元カノの記憶は年月を追うごとに強くなり、またタチが悪いことに美化されてしまっていくのだった。
僕はふと、ロールキャベツとハヤシライスは相性が悪いのかな……とか考えてしまう。
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