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愛を取り戻せ
待ち合わせは街中の喫茶店。緊張のあまり予定時間より早く着いてしまったが、ことりさんもまた僕に負けず劣らずだった。
ことりさんはアカネさんよりも小柄で可愛らしかった。清楚めな色合いで纏めたロングスカートに、シュシュにアクセントを置いて彼女の趣向もアピールしていた。
「わっ、私! 今岡ことりですっ!!」
彼女は僕と違い既に社会人。僕よりも大人な男性と接する機会も多いが、彼氏となればまた別の話で緊張していたそうだ。
「僕は吉田マコト。今日は一日、宜しくお願いします」
「こっ、こちらこそっ!」
ふわっと舞い上がる、艶のある髪の毛からは僕の鼻孔をくすぐる香りがした。良い香りがする。安物の香水だけで無い事は確かだ。
早速席に着き、僕はブレンドコーヒーを、彼女は紅茶(ダージリン)を注文する。しばらくは互いの自己紹介をすると、アカネさんと同じくアプリには書かれていない情報も入ってくる。
「ロールキャベツって書いてありましたけど、本当にその通りなんですね」
彼女がはにかむ姿は正に女性特有の控えめな笑い。アニメの声を超えた、芝居でもないリアルな仕草に僕の心臓は高鳴っていた。
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