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この後は映画を観てから昼食を共にする、と言うデートの鉄板コース。初見の相手とするならまず間違いないだろう。
当時、後に日本アカデミー賞アニメ部門で最優秀作となり社会現象にもなった作品もあったのだが、それを敢えて外したもう一つの作品を観る予定だ。
そろそろ、と言うことで喫茶店を後にして映画館に向かう。本日は日曜日と言うこともあり、話題の作品は異例のロングランとなってまだまだブームに陰りは見えなかった。それもあって、並んでからチケットを買うまでに四十五分は待った。
「ジュースとか買おうか」と彼女をリードする。
「な……なんで『聲の色』が観たいのですか?」
家族連れだけでなく、デートらしき男女も見掛けた。僕もその一組なのだが他のようにはいかない。ことりさんから気を遣われる。
「なんかさ、友人がめっちゃ泣ける、って言ってたし、『観て損は無い』とか言ってたから……かな? ことりさんはなんで?」
友人とはミノルの事だ。秀逸な映画には嗅覚の鋭いミノルが言うなら間違いない。
「私も……職場の人に勧められまして。うん、それ」
ことりさんにもミノルのような知り合いがいるようだ。
「お会計、3050円になります」
「お……お? お? おぉ?!」
「マコトさん、どうされたのですか?」
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